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思い出のじゃんじゃんらぁめんの風景

朝刊
11 /26 2012
信子「あー、昨日のじゃんじゃんらぁめんはやばかった。この歳になって泣きそうになっちゃった」
益利「仕方ないんじゃないか?思い出のラーメン屋なんだろ?」
信子「うん。十数年も昔の話。あたしは某ハンバーガー屋で働いていたわけよ。そこで深夜のクローズ作業が終わった時に、社員の人とバイト仲間で夜まで営業してるおいしいラーメン屋があるって噂を聞いて、みんな行ったのがあのじゃんじゃんらぁめん。当時は夜でも行列で食べるの大変でさぁ。でもことあるごとにみんな食べに行ったっけ?おいしかったわぁ。それが昨日アマチュア演劇に行く時に気になるから、通りかかったらまだ営業してるんだもん。そら入るわな」
益利「土曜の夕方でも前橋は静かだったな。そこで今でもひっそり営業してたとは」
信子「滅多なことでは昔なんて思い出さないし、頭の中に圧縮ファイルになってる思い出が十年以上ぶりにじゃんじゃんらぁめん食べた時に一気に展開されて思い出が頭の中に広がったのよね。そういえば、あの頃一緒に働いていた人達の顔とか。すっかり忘れてたけど、こんな事で人って思い出すのね。びっくりだわ」
益利「まあ、あそこのラーメンはうまかったからなぁ」
信子「ふとみんな今頃どうしてるんだろうとか思ったり、ここにはいつもみんなと来てたなぁと化思ったり。ぎゅうぎゅうだった当時のカウンターをあたし達で独り占めだったり、とてつもない時間が過ぎてることを実感したり、あー、あたしにとっての玉手箱だったのかも…」
益利「時間は止められないし、過ぎていくばかりだからな」
信子「それにしても過ぎすぎてるっていうか。あたしみたいに他の人もここのラーメン思い出して、あたしのことを思い出すのかなぁとか思ったり。そんなこと考えながらラーメン食べたら、みんなと会いたくなったり、自分が会わないって決めたくせに、こんな時に自分の気持ちでみんなと再会したいとか自分勝手というか、さすがにもうそんな時期はとっくに過ぎてるし…。なんでこんなに時間が経ってからこんな思い出のラーメン屋になんか入っちゃったのかと思ったけど、やっっぱりおいしくて…。なんか泣けてきそうで…」
益利「我慢しなくても泣けば良かったのに」
信子「代金支払う時にずっと昔は良く来てたんですよ、とか言おうかと逡巡したけど、言えなくて。なんか久しぶりに人間らしい動揺してる気がする。気が付くと得る物も多かったけど、それでも失ってる物の多さにも気付くのが時の流れね」
益利「人間手に入れた物と知り合った人全員を握りしめて生きていくのは無理だからな。知り合った人全員と週一でも会おうと思ったら相当な時間が必要だし。やっぱり人間関係もお互いに取捨選択してる。それが人生ってもんだ」
信子「新しく出会うこともあるし、逆に新しい趣味のアマチュア演劇がこうやって思い出の地に足を向かわせたりするし、人生は不思議ね」
益利「そして、今日は桐生の有鄰館にいるし、か」
信子「そうね。今日は有鄰館の演劇を見に来たわけだけど、ずいぶん有鄰館の他の建物でもイベント事があるし、盛り上がってるみたいね。ちょっと驚きだけど、アーティスティックな展示と有鄰館の相性は最高。それにしても小学生の絵が飾られていたけど、その中にアメリカの小学生の絵があって、アメリカの小学生の絵って日本の子供と違うのね。子供らしい絵なんだけど、日本の子と違うというか、物の見え方というかとらえ方が違うのかな」
益利「世界中の子供の絵って集めたら面白いかもな-。あれは新発見だった」
信子「それに目当ての演劇トランスもかなり面白かったし!あれは良かったぁ」
益利「笑いとシリアスが絶妙だったな。物語が面白かったし、三人劇でもあれだけの劇が作れるんだなぁ」
信子「あー、満足。そうそう、ついでと言っちゃなんだけどー、桐ヶ丘遊園地行ってくれない?」
益利「いいけど、この時間だと閉まっちゃうんじゃないか?」
信子「別に乗りたいわけじゃなくて、あそこの蒸気機関車久々に見たいの。花蔵寺遊園地の無くなっちゃったし、こっちもいつ無くなるかわかんないし。あとあそこのちゃっちい観覧車も見ておきたいのよね。久々に」
益利「わかった」
信子「なんか昨日今日って思い出の地ばっかりで、こんなこともあるものねぇ…。人って動き出すと何が起こるかわからないね」
益利「それが人生だからな」
信子「人生って意志を持って面倒くささを払いのけて動いた時に、奇跡が起こるものなのね。他の誰かもこんな奇跡が起きたらいいのに」
益利「だから思い出の地って必要なのさ。その場所は思い出の引き出しを開けるための鍵だからな」
信子「…この二日間で開け過ぎよ…」

黒崎銀二

Twitter:Ginji_k
この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。
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2007年8月31日開設
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